「子育ての大誤解」親の育て方は子どもの性格や知能に影響しない

子どもの発達

子どもに何かあったら「心理学」と名前のついた肩書をもつ人が、「母親の育て方のせい」と決めてかかるの多いこと。正直言うと、そんな話を聞くたびに辟易します。

発達心理学の分野で、子どもの性格や知能は、親の育て方よりも遺伝のほうが強く影響していると考えられているって、ご存知でしたか?

 

「小さなころ親の育て方が子どもの知能や性格を決める、というのは間違いである」

“サイコロジカル・レビュー”という世界最高峰の心理学の理論誌に「小さなころ親の育て方が子どもの知能や性格を決める、というのは間違いである」ことが発表されました(Harris, 1995)

この論文は、アメリカ心理学協会という世界の心理学の中心的な学会から、優れた心理学論文に与えられる“ジョージ・A・ミラー賞”を受賞し、学会の注目を集めました。

数多くの遺伝学・心理学などの研究を網羅しているハリス氏は、子どもの発達には、“遺伝”と“環境”という要素があるが、この“環境”というのは、親のことではなくて仲間集団のことであると主張したのです。

つまり、親子が似ているのは遺伝であり、虐待さえなければ育て方の影響はないと言い切ったのです。

実は、ハリス氏自身が1人目の養子と2人目の実子の母親でした。そして、養子の第1子が育てにくい性格であることを、親戚から“育て方のせい”であると責められた経験がありました。

しかし「親が同じように育てようと頑張っても、子どもはそれぞれもともとの性格が違って、同じようには育たないし、育てられないんだ」という、心の叫びのような思いがあったのです。

そして、それを裏付ける、多岐にわたる分野の徹底したサーチで知能や性格など親子が似ているのは遺伝であり、育て方ではないことを主張したのです。

 

ぜひ読んで!「子育ての大誤解」

筆者が初めてハリス氏の考え方を知ったのは、サイコロジカルレビューの論文を一般向けに加筆した本の邦訳『子育ての大誤解』をたまたま手にしたのがきっかけでした。

もう何年も絶版していたのですが、なんと文庫で新版がでました!ぜひ読んでください!

子育てについての学びで最も衝撃を受けたのは、間違いなくこの本です。そして、人に伝えるときに最も反発を受けるのもこの内容です。

筆者の子育て講座では、遺伝の影響力の強さについて納得してもらうために、研究の映像などを用いながら、試行錯誤して組み立た90分の講義を受けてもらうようにしています。

短時間で話だけで納得してもらうのは難しいからです。

面白いのが、お子さんを3人以上育てたママや、若い保育学生は納得してくれるのですが、1人目の子育ての30代後半以降の母親に納得してもらうのは、かなり難しいことです。

5年後くらいに「先生の言ってることが少しわかるようになりました」と言われたこともあります。

私にもそうだったように、子どものために頑張りすぎなほど頑張っている母親にとって、すぐには納得できないことなのでしょう。

 

遺伝か環境か?

ハリス氏の学説は、一所懸命子どものために力を注ぐ新米ママだけでなく、学会の中でも“虐待を助長するのでは”と、猛反発を受けました。

社会心理学者であるミシガン大学のニスベット教授は、遺伝を強調することで、人種差別の助長や、教育の軽視を懸念して、“環境”の影響を重視するべき、としています。

しかし、ニスベット教授の言う“環境”は、明らかな生活水準の違いのことを指します。

つまり、裕福な教育熱心な家庭で子育てされた子どもと、スラム街で孤立して子育てされた子どもでは、知能に差があるという、日本人からしたら、そんなのは当たり前だろうと思えるようなレベルの話なのです。

だから、教育熱心な親が、より早くから教育を始めようが、○○式をさせようが、その子の遺伝的な性格や知能を変える根拠はないのです。

 

完璧などは目指さなくていい

もちろん、子どもは親から受け継いだ素質を持ってますから、日常生活の中で親が、伸ばすためのチャンスを作ることはできるでしょう。

しかし子どもには、虐待や貧困のない、衣食住と愛情がそれなりにある「ほぼよい環境」さえあればいいのです。それさえあれば、その子は自分の素質を仲間や先生たちの中で開花させるのです。

親のできることは、子どもが伸びていけるための土台を作って、そして、子どもが自分の素質をのばしていくための環境や友達に出会えることを祈ることだけなのかもしれません。

親は根拠も終わりもない、完璧などは目指さなくていいのです。もう十分、あなたはがんばっていますよ。

 

【引用】

Harris, J. R. (1995). Where is the child’s environment? A group socialization theory of development, Psychological Review, 102, 458-489.

ジュディス・リッチ・ハリス(2000)『子育ての大誤解』(早川書房)

リチャード・B・ニスベット(2010)『頭のできー決めるのは遺伝か環境か』(ダイヤモンド社)

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